トップ文化書評【書評】『医学問答』仲野徹・若林理砂著 基本の学術で東・西洋に違い

【書評】『医学問答』仲野徹・若林理砂著 基本の学術で東・西洋に違い

評者は先月、術後癒着性腸閉塞で10日間入院した。15年前の胃がん手術で、残った胃と腸を縫い合わせた箇所が腹壁に癒着したから。メスなど異物が入ると人体には修復する作用があり、それが癒着をもたらすという。術後、飲み続けているのが大建中湯(だいけんちゅうとう)という胃腸の動きを良くする漢方薬。病気をピンポイントで治す西洋医学を東洋医学がサポートする形で、近年増えているらしい。

40代で鍼灸(しんきゅう)の効果を知ったのは、なかなか回復しなかった喘息(ぜんそく)の発作が、同じ症状で苦しんでいた姉の紹介で訪ねた大阪の鍼灸院ではりを打ってもらい、完治したため。それまで懐疑的だった東洋医学を見直した。

西洋医学が自然科学をベースにしだしたのは19世紀からで、内科医の仲野氏によると、顕微鏡で細菌を見ることができ、細胞病理学が確立されたのが大きいという。鍼灸師の若林氏は、東洋医学の基本は哲学で、世界の理(ことわり)と人間の体はつながり合い、対称の関係にある「天人合一」の思想だと言う。現実を思想に合わせようとするので、無理が生じると。

身近な風邪について、風邪症状を引き起こすウイルスは200種類もあり、その一つがコロナウイルスで、風邪の10~15%を占める。インフルエンザは風邪ではなく、インフルエンザウイルスによる流行性感冒だそう。

東洋医学は「治す」よりも、「病気にならない」ところに重きを置く。それが「養生」で、線路の保線作業のようなものだという。でも、貝原益軒(えきけん)の『養生訓』は江戸時代の生活環境のものなので、今では当てはまらないものがある。

高齢になって草刈りをし過ぎると、夜中に指や足がこむら返りになる。ネットで探して買ったのが芍薬(しゃくやく)甘草湯(かんぞうとう)で、漢方らしくなく早く効いた。口腔(こうくう)粘膜から吸収されるためで、筋肉のイオンバランスを整える作用があるという。ただし、連続して服用すると副作用があるらしい。

多田則明

左右社 定価1980円

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