トップ文化書評【書評】『希望ある日本の再生』 小名木善行著 国家立て直しは建国の精神で

【書評】『希望ある日本の再生』 小名木善行著 国家立て直しは建国の精神で

他人の批判ばかりを聞かされても、良い気分にはならないものだ。同じように、何かにつけて相手が悪いと決めつけていても何も改善されることはない。これは政府に対する野党や国民の姿勢についても当てはまる。不平不満がまん延する日本社会への処方箋となるのが本書だ。

テレビのワイドショーや討論番組については、「社会へのストレスを会社の上司よりもずっと偉い人たちをつかまえて、ののしることで、社会のガス抜きとして人気を博した」と批判。30年間、日本は経済成長していないことも手伝い、若者はこういった議論が何の役にも立たないと気付き、政治離れしている。

著者は「財務省悪玉論」を例に挙げている。野党政治家や経済評論家らが頻繁に口にしているものだが、法改正は国会の仕事。財務省だけを批判するのは筋違いで、一人一人の国会議員が志と意識を持って働いてもらうことが最善策だという。

外国人への生活保護支給に異議を唱える国民や政治家が多いことについても、昭和27年から始まった制度を廃止すれば済む話。政府や厚生労働省をたたくのは筋違いだと指摘する。独裁国家ではないのだから、合意形成に努めるべきという著者の主張はまさに正論だ。

良き日本人の精神を取り戻すには、日本書紀の「建国の詔(みことのり)」の精神に立ち返るべきだと説く。戦後、GHQ(連合国軍総司令部)が日本を壊そうとしてもできなかったのは、日本人が「愛と喜びと幸せと美しさ」を求める民だからだという。天皇陛下が国民一人一人を「大御宝(おおみたから)」と称するように、天の下に一つの家のような社会を築くことが日本再生のカギなのだろう。

日本建国以来、実は4回の鎖国が行われて、そのたびに日本文化が花開いたと指摘。他のアジア諸国が鎖国できなかったのは、欧米諸国と対抗できるだけの軍事力がなかったからだという。西欧の価値観を日本に当てはめようとする必要はないのだろう。

豊田 剛

青林堂 定価1980円

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