トップ文化書評【書評】『日韓同時核武装の衝撃』鄭成長著 核使用できない状況を作る

【書評】『日韓同時核武装の衝撃』鄭成長著 核使用できない状況を作る

韓国では独自の国防策として、核武装に賛成する世論が急増しているという。

韓国世宗研究所朝鮮半島戦略センター長を務める著者もまた、極東地域の安全保障政策として韓国の独自核武装論を唱える一人だ。北朝鮮は既に韓国への先制核使用を正当化する法令を採択しており、誤った判断による核使用・核戦争のリスクがある。著者は攻撃・制圧のためでなく、北朝鮮が核兵器を使用できない状況を作るための核保有であると訴える。

さらに北朝鮮の「完全な非核化」が目標では、相手を交渉のテーブルに着けることさえ不可能と指摘。北朝鮮指導部が体制維持に必要と判断する最小限の核保有をひとまず認め、「準非核化」「段階的廃棄」の実現を目指す。

一方、安全保障のためとはいえ、核拡散防止条約(NPT)脱退は国際社会からの制裁を受ける懸念もある。これに対し、著者は国際社会への説得案も示しているのが興味深い。米国との交渉材料として提示するのは、「核の傘」や米軍兵力を提供するより、同盟国に「友好的核拡散」を許可した方が、米国の国防予算削減につながるという主張だ。

さらには中国への説得案も提示する。米朝の核戦争が生じれば、北朝鮮と隣接する中国も放射能汚染を受け、北朝鮮から大量の難民が流れ込むことが懸念される。核戦争回避を目的とした韓国の核武装化は、中国の安全保障を高めると同時に、北朝鮮の核削減が進めば中朝韓の経済交流を活性化させ、中国東北部の経済発展につながる、という説得プランだ。

9月末に日本で出版記念講演を開いた著者は「韓国の核保有は時間の問題」と強調。日本社会での核兵器保有の拒否反応には理解を示しつつ、「韓国と日本が同時に保有すれば、国際社会の反発も弱まる」とし、本書が日本国内での「核保有議論の起爆剤」となることに期待を込めた。(姜英之訳)

石井孝秀

ビジネス社 定価1980円

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