トップ文化西洋絵画のサブジャンル『動物画』 大農業国の豊かな生活風景 19~20世紀の作品200点以上―クールベ美術館【フランス美術事情】

西洋絵画のサブジャンル『動物画』 大農業国の豊かな生活風景 19~20世紀の作品200点以上―クールベ美術館【フランス美術事情】

 西洋絵画の世界で動物画はサブジャンルの一つだった。その理由は、聖書的解釈において、神、人間、動植物を含む自然は、東洋的な横の並列関係ではなく、縦の階層関係にあったからだ。だが、自然だけを描く風景画、花や果実を描く静物画、生き物を描く動物画は、近代絵画の主要なジャンルでもある。

「ニヴェルネの耕作」ローザ・ボヌール作 1849年作 ?オルセー美術館
「ニヴェルネの耕作」ローザ・ボヌール作 1849年作 ?オルセー美術館

 フランス東部スイス国境に近いドゥー県オルナンにあるクールベ美術館で開催されている展覧会「動物写実主義」(11月8日まで)には、200点以上の動物画が展示されている。時代は動物画の黄金期と言われる1848年から1914年だ。

 オルセー美術館から貸し出されたローザ・ボヌール作の「ニヴェルネの耕作」は、横幅2メートル60センチの傑作だ。

 広大で明るい青空の下、畑を耕す数頭の牝牛(めうし)を描いたこの作品は、実に美しく、動物写実主義の作品を新しい絵画部門と位置付けた記念碑的なものである。大きな牝牛たちの間には小さく見える農夫が数人描かれ、人や牛の足元で耕される土の香りまで漂ってくるようだ。フランス独特の緑に覆われた丘陵地を背景に、大農業国フランスの豊かな生活風景が伝わってくる。

 産業化、都市化が進むフランスで、画家たちは牧草地ののどかさを感じさせる牛の姿を作品に残した。それは、手を伸ばせば牛に触ることができるかのような錯覚を覚えるほどだった。当時は政府が大規模な畜産奨励を行っていた時代であり、国家の委託を受けて、農作業に向く大型で力強く、肉牛としても利用できる新しい改良品種の牛をアピールする目的も作品にはあった。そのため、動物画を描く人々を農業画家とも呼んだ。

 「この時期は、人間社会が動物の世界を社会構造の不可欠な要素としてこれまで以上に認識し始めた時代だった」と同展キュレーターのティエリー・ロージェ氏は語る。

 アントワーヌ=ルイ・バリー、コンスタント・トロワイヨン、ローザとイジドール・ボヌールなど、農業画家の第一人者たちが、1856年の第1回世界繁殖動物コンクール用の図録に作品を寄稿した。

 19世紀後半、フランスでは動物愛護の観点から、公共の場における牛などへの虐待が問題視された。作家エミール・ゾラは「動物との関係が改善されれば、必ずや人間の幸福の進歩につながるはず」と書き残している。

 女性写実主義画家のボヌールは、動物虐待防止協会の設立当初から参加し、動物虐待を非難する本の挿絵を描いた。

 農業画家たちは、動物をモチーフに制作する日々を送る中で、動物への愛情を深めていった。そのため、どの動物画も、優しい目をしたヤギや牛の親子や兄弟が愛くるしく戯(たわむ)れる、温かい作品となっている点が特徴だ。自然と共存する動物たちのテーマには普遍性があると言える。

(安部雅延)

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