
日本でも人気の高い印象派の巨匠、クロード・モネは、地元フランスでも不動の存在と言える。今年はモネ没後100年に当たり、さまざまな特別企画の展覧会が開催され、モネが残した作品を一気に概観でき、モネに着想を得た芸術家たちの作品も鑑賞できる。日本の浮世絵を愛したフランス近代絵画の巨匠は、20世紀以降の西洋美術に大きな足跡を残した。
モネを振り返る大規模な展覧会の一つは、「ノルマンディー印象派」展(9月26日まで)。睡蓮の画家モネの残した作品を21世紀の視点から考察する展覧会だ。
モネは1883年から1926年までの43年間、パリ西方ルーアンに向かうジヴェルニーで人生の後半を過ごした。
自分が描きたい風景を自邸の庭に再現し、太鼓橋が真ん中に据えられている。自ら庭の手入れに没頭し、「庭にいるモネこそが最前線にいる」と、友人のジョルジュ・クレマンソーは、第1次世界大戦中、モネが家に引きこもり、戦争に無関心だったと非難する人々に対し説明した。
米国でも人気の高いモネは、米国人愛好家にとってもジヴェルニーはモネの聖地だ。モネの生きた19世紀末から20世紀前半は、ヨーロッパに第2次産業革命の風が吹き、今は当たり前になっている石油と電気がもたらしたエネルギー革命も手伝って、人々は大都市に移動し、自然は身近な存在でなくなりつつある時代だった。
しかし、大農業国家フランスに生きるフランス人は、殺風景な都会に住みながら、自然を渇望し、モネの作品は、多くの人々に安らぎを与えた。モネをエコロジーの先駆者と呼ぶ評論家もいる。今や人工知能(AI)とデジタル空間に囲まれた現代人にとってモネは、自然をモチーフに作家の感性が織り成す色彩と光が人々に瞑想(めいそう)と癒やしの時間を与えてくれる。
「ノルマンディー印象派」展は、ヴェルノン、ル・アーブル、カーン、オンフルールなどを経由して、ルーアンからシェルブールまでの牧歌的な散策ルートで開催されている。モネ作品を散策しながら、出口が見えない戦争や紛争、19世紀を思わせるカオスのような世界情勢の中に生きる現代人の心を揺さぶる展覧会といえそうだ。
ノルマンディーからブルターニュにかけての自然は、今も人々の心の再生に役立っている。今回の企画展では写真家サラ・ムーン(1941年生まれ)の作品展がルーアン写真センターで開催されている。彼女の新しいノルマンディーの写真作品に加え、ロワール川沿い、パレルモのバガテル、そして自然史博物館で撮影された植物写真の数々も展示されている。
さらにアイ・ウェイウェイが65万個のレゴブロックで再現した「睡蓮(すいれん)」をはじめ、中谷(なかや)芙二子(ふじこ)の霧の彫刻作品(オンフルール)、人間、植物、水生生物が融合し、光と大気現象によって彩られた抽象的空間を提供するブラジル系ドイツ人の現代アーティスト、ヤナイナ・チャペの展覧会など、モネに因(ちな)んだ14の展覧会が開催されている。
(安部雅延)






