トップ文化特別展「神仏の山 吉野・大峯 ―蔵王権現に捧げた祈りと美―」 藤原道長直筆の写経、蔵王権現立像など 日本の宗教文化の源流 奈良国立博物館

特別展「神仏の山 吉野・大峯 ―蔵王権現に捧げた祈りと美―」 藤原道長直筆の写経、蔵王権現立像など 日本の宗教文化の源流 奈良国立博物館

VRスクリーンの金峯山寺本尊「金剛蔵王大権現3躯」(重要文化財)前での法要=奈良県吉野町
VRスクリーンの金峯山寺本尊「金剛蔵王大権現3躯」(重要文化財)前での法要=奈良県吉野町

 奈良国立博物館で4月9日、特別展「神仏の山 吉野(よしの)・大峯(おおみね) ―蔵王権現(ざおうごんげん)に捧げた祈りと美―」の報道内覧会があった。

 記者説明会で井上洋一同博物館長は、「吉野・大峯は古くから日本独自の宗教文化が根付いている所で、本展は同地で展開された信仰と修行の歴史に光を当て、修験道(しゅげんどう)の世界を紹介したい」と話し、次いで総本山金峯山寺(きんぷせんじ)の五條良知(ごじょうりょうち)管長が「吉野・大峯の神像や仏像、宝物(ほうもつ)が一堂に展示されるのは初めてのことで、二度とないのではないか」とあいさつした。

 続いて、VRスクリーンに等身大の金峯山寺の本尊「金剛蔵王大権現3躯(く)」が映し出された東新館で、五條管長を大導師に法要が営まれ、同展の成功が祈願された。

蔵王権現立像。平安時代(12世紀)(奈良県吉野郡天川村の大峯山寺)
蔵王権現立像。平安時代(12世紀)(奈良県吉野郡天川村の大峯山寺)

 吉野から大峯の山上ケ岳(さんじょうがだけ)は金峯山と呼ばれ、弥勒(みろく)が現れる未来のための黄金を秘める霊山として信仰を集めてきた。

 平安時代には、天皇や藤原道長ら都の貴族がこぞって参詣し、南北朝時代には「建武の新政」を行った後醍醐天皇が京都を逃れ、吉野朝廷(南朝)を成立させるなど、各時代を通じて特別な場所であった。今日でも、吉野と熊野を結ぶ大峯山を縦走する大峯奥駈道(おくがけみち)は、修験者(しゅげんじゃ)の修行の道として多くの人々を引き付けている。

 2015年に金峯山寺の管領(住職)が使う納戸(なんど)の木箱から、経典の断簡(だんかん)が風呂敷に包まれた状態で発見され、文化庁や奈良県の調査により、道長が金峯山(山上ケ岳)の山上に埋納(まいのう)したと伝わる直筆の写経(しゃきょう)15巻の一部で、江戸時代に掘り出された後、行方不明になっていたものであることが分かった。

 本展では、道長自筆の国宝・紺紙金字経(こんしきんじきょう)を修復後初公開し、山岳修行の祖・役行者像や大峯山寺本堂の秘仏尊である蔵王権現立像(りゅうぞう)、曼荼羅(まんだら)や鏡像、人々が祈りを捧(ささ)げた神像や仏像など、自然と神仏への信仰が一体となって生み出されたこの地域ならではの宝物を一堂に展観する。

国宝 藤原道長経筒。平安時代 寛弘4(1007)年 (奈良県吉野郡吉野町の金峯神社)
国宝 藤原道長経筒。平安時代 寛弘4(1007)年 (奈良県吉野郡吉野町の金峯神社)

 目を引いたのは理源大師倚像(りげんだいしいぞう)(江戸時代、17世紀、奈良・餅飯殿町(もちいどのちょう)財団蔵)で、役小角(えんのおづの)に私淑(ししゅく)して金峯山で山岳修行をし、参詣道の整備や仏像造立などで金峯山の発展に尽力したことから、役小角以降途絶えていた修験道の再興の祖とされた。讃岐国(さぬきのくに)の本島生まれとされ、空海の実弟真雅(しんが)の弟子で、醍醐寺を開き、讃岐で見いだした弟子の観賢(かんげん)を初代座主とした。

 理源大師や観賢ら山岳修行をした僧たちにより山岳信仰と真言密教が融合したと伝わる。

 観賢は921年に実現した空海への弘法大師(こうぼうだいし)号下賜(ごうかし)に大きな役割を果たした東寺長者で、空海と同じ香川県の生まれ。仁和寺(にんなじ)別当や醍醐寺座主、金剛峯寺座主を歴任し、般若寺(はんにゃじ)を再興、高野山に宝亀院(ほうきいん)を建立し、空海が唐から請来(しょうらい)した「三十帖冊子(さんじゅうじょうさっし)」を東寺に納め、真言宗長者の相承(しょうじょう)とするなど、空海入定後約90年を経て衰退していた真言宗を復興した僧として同宗では有名だが、一般にはあまり知られていない。記者らは香川県で今、観賢の顕彰活動を行っている。

 音声ガイドナビゲーターは俳優・柄本佑(たすく)さんが担当。また、金峯山寺で一山を守護してきた金剛力士の巨像は、仁王(におう)門の大規模修理のため奈良国立博物館の仏像館に展示されている。

 会期は4月10日(金)~6月7日(日)で、5月10日(日)までが前期、5月12日(火)からが後期で、一部の作品が展示替えされる。

(多田則明)

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