トップ文化精神性を追求したナビ派 注目される画家たち 日本美術の影響を受ける【フランス美術事情】

精神性を追求したナビ派 注目される画家たち 日本美術の影響を受ける【フランス美術事情】

「白い馬」モーリス・ドニ作 1894年作 cJean Louis Losi
「白い馬」モーリス・ドニ作 1894年作 cJean Louis Losi

 フランスの19世紀末、新たな美術運動が勢いを増す中、印象派の写実を嫌い、日本画のような平面的で装飾的な絵画を追求しながら、同時に精神性も追求するナビ派(ヘブライ語で預言者)がパリ西部郊外、サンジェルマン・アンレーを中心に20世紀の先駆的美術運動を始めた。

 印象派もそうであったようにナビ派も日本美術の影響を強く受け、特に中心的存在のモーリス・ドニやピエール・ボナールは「日本かぶれ」とまで呼ばれた。西洋絵画はキリスト教の聖画を中心に、人々の信仰を鼓舞する目的から始まり、反教会権力などの啓蒙(けいもう)主義に発展し、絵画は芸術家の主観重視に向かった。

 そんな中、新たな道を模索するナビ派は、「芸術は自然の模倣である」という従来の固定観念から芸術を解放し、抽象芸術へとつながる新しい価値観を「啓蒙」したともいわれている。専門家の中にはナビ派は美術の革命的運動だったともいわれた一方、近代の物質主義の世界観に抗した神秘主義に目を向けたところが先駆的という評価もある。

 ゴーギャンが仏西部ブルターニュのポンタヴェンにいる時に追求した「心の光」は、印象派の物質を照らす光とは完全に異なったアプローチだった。そのアプローチに日本の浮世絵が影響を与えたというのは興味深い。同じ浮世絵の影響を受けた印象派の命は長くはなかったが、ナビ派は20世紀の抽象芸術に命が受け継がれた。

 ロンドンとドバイに拠点を置く、近代美術と現代美術専門の「ワディントン・カストット・ギャラリー」が、現在サンジェルマン・デプレに新装オープンしたギャラリーで「ナビ派の衝撃」展を6月6日まで開催。21世紀の芸術が、心の光をテーマにしているのにふさわしい開館記念展と言えそうだ。

 人工知能(AI)やロボットに行き着いた現代社会に対して、ナビ派は、今の時代に必要な問い掛けをしているようにも見える。実はフランスは今年、復活祭の日にカトリック洗礼を受けた成人が2万人を超え、特に18歳から25歳の無宗教者の洗礼者が最も多かった。フランスは今や宗教離れの国ではなく、宗教を選択する若者が増えている。

 特にカトリックは信仰の神秘を強調しており、ナビ派との親和性は高い。実際、ナビ派の画家が集まったドニの自宅でもあったサンジェルマン・アンレーの家(現在は記念館)には、ドニの壁画がある礼拝堂がある。装飾的でありながら内省的であるナビ派が追求した世界は、21世紀に通じる普遍性があると言えるかもしれない。

 同展には、ナビ派の作品と並び、ベン・アルペア、エテル・アドナン、マルセル・バルセロなど、十数名の現代アーティストの作品も並んで展示されている。同展のために特別に制作されたこれらの作品の中には、日本風の風景画を描くアンヌ・ローテンシュタインの作品も展示されている。

(安部雅延)

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