トップ文化香川県坂出市のモスクを訪ねて 大切な「祈り」を守る 地域社会との交流の場【宗教思想】

香川県坂出市のモスクを訪ねて 大切な「祈り」を守る 地域社会との交流の場【宗教思想】

アラビア語のコーランの言葉で飾られた礼拝所
アラビア語のコーランの言葉で飾られた礼拝所

 ラマダーン(断食月)の2月27日金曜日、香川県坂出市にあるモスク「香川マスジド」を訪ねた。マスジドはアラビア語でモスクのこと。俗に「香川モスク」とも呼ばれている。昨年11月30日の開所式には県内を中心とするインドネシア、バングラデシュ、パキスタン出身のムスリム(イスラム教徒)と日本人の支援者ら計約300人が参加した。県内ムスリムの祈りの場所であると同時に、地域社会との交流の場になっている。

 記者を迎えてくれたのは4年かけてモスクを完成させたフィカルさん(43)。インドネシアの西スマトラ州パダンに生まれ、高校を卒業して約20年前に外国人労働者として来日。坂出市のブロイラー加工工場で働き始め、その後、造船所の溶接工になり、4年前に1日5回の礼拝ができる簡易な施設を造ったのが香川モスクの始まり。

香川モスク代表のフィカルさん
香川モスク代表のフィカルさん

 「決まった時間にお祈りをしたい」という仲間の思いを実現するため、県内外の技能実習生や協力者から寄付を募り、中古の倉庫を改築、内装を施した。礼拝所は聖地メッカの方角を向いている。

 「改築や内装はほぼ自分たちの手仕事で仕上げ、礼拝前の足洗い場も自作です。礼拝堂の色はみんなで決めました」とフィカルさん。1階は男性の礼拝所、2階には女性の礼拝所とイマーム(指導者)の居室があり、広い台所も設けた。

 今はマレーシアの宗教学校から、優秀なイマーム候補生を、実習の意味も込めて受け入れている。彼らは3カ月交代で派遣され、滞在費は香川モスクで負担する。「彼がそうです」とフィカルさんが指さす方を見ると、少年が礼拝所で祈りの準備をしていた。

 モスク開設に向け、フィカルさんは一般社団法人KMIKを設立し、土地・建物を社団法人名義で購入した。

 KMIKは「香川にいるムスリムの家族」という英語の頭文字から。3年の活動実績を積み、行政書士と宗教法人の申請を準備している。

 ムスリムには1日5回の礼拝の義務がある。日の出前、正午から午後3時まで、午後3時から日没まで、日没後、就寝前で、お祈りの時間は3~6分で、モスクではみんな一緒にお祈りすることが多い。フィカルさんは「日本に来て、仕事のためにお祈りができなくなったりすると、すごく嫌な気持ちになりました」と言う。

 モスクは朝5時から夜10時まで開けていて、それ以外の時間も、モスクで暮らしているイマーム候補生が対応している。

 日曜日早朝にお祈りしたい人が多いので、土曜の夜は礼拝所に泊まれて、台所で料理もできる。モスクは確かにムスリムの心のよりどころだ。

礼拝所内部の様子

 ムスリムにとって祈りとは何かと聞くと、フィカルさんは真面目な顔つきになり「神様によって人間がつくられた理由は、アッラーにお祈りするためなのです。それがムスリムの信条です」と語った。お祈りの上に暮らしがあるというイメージかと聞くと、「ほんまにそうやね」とさぬき弁に。

 正午近くなると、男性たちが続々と集まってきた。多くは作業服の若者たちで、技能実習生や留学生なのだろう。坂出市は造船所や金時ニンジンなどの農場がある。香川県の技能実習生は約6000人で、県内のインドネシア人は約3500人、坂出市には約330人。礼拝には県内一円からやって来る。

 日本人女性と結婚し永住権を取ったフィカルさんに、永住するのか聞くと、「以前は子供が高校を卒業したら帰国するつもりだった。でないと、日本人みたいに死ぬまで働かないといけないし、お祈りの時間がなくなるからね(笑い)。でも、モスクができたので、これなら帰らんでもいいかなと。正直、どうするかまだ決めてないね」と。フィカルさんの父は、来日前に亡くなっている。モスクが良き宗教理解の場になることを期待したい。

(文と写真・多田則明)

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