トップ文化フランスの20世紀芸術 若き収集家たちの先行投資 無名作家を巨匠に押し上げる【フランス美術事情】

フランスの20世紀芸術 若き収集家たちの先行投資 無名作家を巨匠に押し上げる【フランス美術事情】

アメデオ・モディリアーニ「青い目の女性、1918 年頃。Ⓒパリ近代美術館

 フランスを中心に19世紀末から20世紀の芸術を支えたのは、美術作品の収集家であるコレクターたちだった。当時、コレクターたちは将来を見込んで、才能あふれる作家たちに先行投資する習慣があった。この仕掛けが名もない作家を巨匠に押し上げる役割を担っていた。

 パリ近代美術館では「モーリス・ジラルダンへのオマージュ:コレクター、ギャラリーオーナー、そしてパトロン」展(6月28日まで)が開催中だ。

 美術愛好家、モーリス・ジラルダンは、20世紀前半のパリで活躍したフランスの歯科医、コレクター、ギャラリー経営者で、その非常に質の高い収集作品はパリ市立近代美術館に遺贈された。

 当時、新進気鋭の画家から、まだ無名の画家まで、ジラルダンは自らの優れた鑑識眼に従い、ジョルジュ・ルオー、マルセル・グロメール、ベルナール・ビュフェ、ラウル・デュフィ、モーリス・ユトリロ、スーティン、モディリアーニなどの作品を買い集めた。多くの作品のモチーフは人間で、画家の鋭い人間観察による描写が歴史を超えて人々に感動を与え続けている。

 自ら画廊「ラ・リコルヌ」を持っていたジラルダンは、画家たちに発表の場も提供した。近年、ジラルダンの収集作品の近代美術発展への貢献が再評価され、昨年10月からジラルダンの遺贈コレクションがパリ市立近代美術館で回顧展の形で展示されている。当時、すでに評価の高い価格の安定した作品を扱う画商はいたが、彼は芸術支援を中心に据えた人物だった。

 今は、名画として世界的に知られた作品となっているが、彼が収集した頃は価格も安定していなかった。そんな画家のスポンサーとなり、彼らの芸術活動を支えたジラルダンは、フランスの近現代美術の発展には欠かせない人物だ。

 実際に美術館のコレクションに加わった380点の作品は、美術館では、そのうち約100点を常設コレクションの一部として展示している。これは、当館の歴史的軌跡の支柱であるジラルダン・コレクションとの有機的な繋(つな)がりを示すためだ。

 本展では、ジラルダンとジョルジュ・ルオー(陶器3点を含む21点)、マルセル・グロメール(12点)、ラウル・デュフィ(1908年の作品『食前酒』を含む6点)、さらには若きベルナール・ビュフェ(約10点)との緊密な関係を浮き彫りにしている。当時、次々に出現する新しい美術様式への反動で、収集家は権威あるアカデミックな作品に動いていた。

 その中で裕福な肉屋の息子で歯科医だった32歳のジラルダンは、リスクを顧みずにアカデミックに抗する大胆な画家たちへの投資を惜しまなかった。その怖いもの知らずの大胆な投資がフランス近代美術の新たなページを開いたのは確かなことだった。

(安部雅延)

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