
米代川(よねしろがわ)流域の奇跡の遺跡群として、秋田県の北東部、大館市比内町の「片貝(かたがい)家ノ下(いえのした)遺跡」が注目を浴びている。日本最大級と言われる西暦915年の十和田火山の巨大噴火によって未曽有の火山泥流が流れ込み、まるで時が止まったかの状態で平安時代の建物や田畑がパック(埋没)された。日本にはこれ以上の遺跡は存在せず、関係者はまず「国史跡指定」を目指し動いている。
先日、秋田県埋蔵文化財センターで同遺跡の説明会が開かれた。解説した村上義直・主任文化財専門員は「なぜ、奇跡なのか。それは、当時の地面に残されている情報量が圧倒的に多いから」という。
道や人馬の足跡、畑や水田、立体的な建物、生々しい人々の暮らしと足取りが残っている。村上さんは「思いがけない発見の宝庫」、「有無を言わせない一発回答」、あいまいさを許さない「怖い遺跡」とまで言う。
平成27、28年に同センターでは同遺跡の確認調査を実施し、立ったままの状態で埋もれた建物の痕跡を見つけ「すごい遺跡と分かった」(村上氏)。流れ込んだ土砂(シラス)で屋内が充填された家もあった。
発掘調査では、竪穴(たてあな)建物跡13棟、板塀(いたべい)跡9条、溝状遺構15条、土坑6基、水田跡を検出した。同センターでは遺跡全体(3万9000平方㍍)の数%しか掘っていない状況で多数の建物跡を検出したことから大規模な集落跡と推測する。
あまりに貴重な遺跡のため、同センターでは地中レーダー探査を実施。発掘して埋め戻した地域を含めた調査地を、地面に1㍍間隔のメッシュを設定し解析したところ、9×7㍍の掘立柱建物の跡や水田用水路が見つかるなど有効性が確認された。
国指定の史跡は全国に約1800件、県内では21件。特に価値の高い史跡は「特別史跡」に指定されるが、秋田県は鹿角(かづの)市の大湯環状列石の1件のみだ。
村上さんは史跡の指定を受けるには「レーダー探査の追認・確認、調査成果の積極的な発信、そして多くの人に見てもらうとともに、地元の管理体制や遺跡の活用に向けた取り組みが課題」と語った。
(伊藤志郎、写真も)





