
ルーヴル美術館の「アポロンの間」に10月19日に強盗が侵入し、ナポレオン時代の王冠の宝石など8点が、7分間で白昼堂々盗まれた。事件を受け、マクロン仏大統領も巻き込んだ非難の応酬が続いている。事件の世界的注目度は、同じパリで2019年に発生したノートルダム大聖堂火災を上回るとまで言われている。
年間約900万人の来館者数を誇り、7万3000平方㍍の敷地に約3万5000点が展示される世界最大規模の美術館で起きた盗難事件に、「屈辱的」との政府関係者の声が上がった。
同時に非難を恐れて責任の押し付け合いから館長はじめ、文化大臣、大統領に至るまで激しい論争が巻き起こり、多くの臆測が行き交っている。
左派は、職員不足を再三訴えていたにもかかわらず、政府が逆に人員削減したことで事件が起きたと非難し、右派は組合活動に熱心な職員の働くモチベーションの低さを非難している。
ローランス・デカール館長はマクロン氏に辞表を提出したが拒否されたという。真相は闇の中で、彼女は防犯カメラの不足は認めたが警報装置は作動し、職員も適切に働いていたと説明した。
一方、会計検査院の2019年から24年の調査の報告書によれば、安全対策に「継続的遅延」があったとの指摘がある。一体、治安は誰のせいか、大統領、政府、館長下にいる100に上るディレクターのせいか、職員のせいか、互いが責任の押し付け合いを繰り返し、真相解明を遅らせている。
はっきりしていることは、盗まれたマリー・アメリー王妃とオルタンス王妃のティアラ(サファイア24個、ダイヤモンド1083個)、マリー・アメリー王妃とオルタンス王妃のサファイアのネックレス(サファイア8個とダイヤモンド631個)、マリー・ルイーズのエメラルドネックレス(エメラルド32個とダイヤモンド1138個)など八つの国宝級の財宝が二度と戻ってこない可能性が高いことだ。
犯行グループは盗品をバラバラにして、個別に売却する可能性が高い。全て一点物の歴史的宝飾品で、フランスが所有する歴史的遺産が原形をとどめない可能性がある。奇跡的に回収できたのは、ナポレオン3世の皇后ウジェニーの王冠。逃走する犯人を追い掛けた一人の職員のおかげで一部破損したものの取り戻すことができた。
仏メディアは、値段も付けられない国の至宝を多数所蔵するルーヴル美術館のセキュリティーは銀行などに比べ、その緩さに驚かされると指摘する。同美術館はダヴィンチのモナリザなどを含め、約48万点の作品が所蔵されており、保険会社は保険適用を拒否している。
(安部雅延)





