トップ文化小泉八雲の母への思い【東風西風】

小泉八雲の母への思い【東風西風】

 小泉八雲ことラフカディオ・ハーンは、日本のアニミズム的な多神教世界への共感を幾つもの著作に残した。その背景には、別れ別れとなった母への思慕があった。また、幼くして預けられたアイルランドのダブリンに住む大叔母が熱心にカトリック教育を行ったことが、逆にキリスト教への忌避につながったと言われる。
 ハーンは軍医をしていたイギリス人の父とギリシャ人の母との間に、英保護領レフカダ島で生まれる。ラフカディオの名はこの島の名前からきている。幼時、母と共にダブリンに移住するが、父親が西インドに赴任中、慣れない環境に苦しんだ母は精神を病み、ハーンを置いてギリシャに帰り、やがて離婚する。

 そんな母をハーンは恨むのでなく生涯思慕し続けた。ラフカディオという名前は珍しく学校でからかわれることもあった。しかしそれはギリシャ人を母に持ちギリシャ生まれ、との自覚を深めさせたようだ。そしてギリシャ神話や英雄物語への憧れを掻(か)き立てた。

 若い頃の「偶像礼拝」という文章でハーンは「キリスト教以前の神々を知って愛する事を覚えてからは、世界は再び私の周囲に光明を生じて来た」と書いている。そして日本に来て八百万(やおよろず)の神々と出会う。

「日本を愛好するに至った一つの原因は、ヘルン自ら言った通り、日本において古代ギリシャ生活の類似点を認めたからであった」と東大でハーンに学んだ英文学者、田部隆次は『小泉八雲』(中公文庫)で書いている。(晋)

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