
セザンヌの画力に圧倒
フランス南部、エクス・アン・プロヴァンス出身の画家、ポール・セザンヌは近代画家の父とされ、19世紀後半20世紀初頭にフランスに集まった画家たちに多大な影響を与えた。彼は近代の風が吹く19世紀後半、生真面目に正面から芸術と向き合った画家だった。
エクス・アン・プロヴァンスのグラネ美術館で開催されている「ジャ・ド・ブッファンとセザンヌ」展(10月12日まで)は、今年のフランスの一大イベントの一つだ。エクス・アン・プロヴァンス出身の画家にとって、ジャ・ド・ブッファンの家は極めて重要な意味を持つ。1859年に父が購入した田舎家の大きな居間に、セザンヌは最初のアトリエを構えた。
多数のデッサンを含む約130点の作品を通して、この場所の装飾、周囲の環境、そしてそこに暮らす人々の姿を明らかにし、1859年から1899年にかけてのセザンヌの芸術の変遷を浮き彫りにしている。
本展のハイライトの一つは、1870年にセザンヌ一家が居を構えたジャ・ド・ブッファン邸の大きな居間の再現だ。若きセザンヌは当地のデッサン学校で学び、グラネ美術館の作品を模写していた。今回展示されている、この時の作品はパリやロンドンの美術館、個人蒐集家から貸し出されたものだ。
初期の作品群を見ると、肖像画と風景画は、その筆致は太く、色彩も濃く、セザンヌの家族だけでなく、エミール・ゾラといった友人たちも描かれている。ジャ・ド・ブッファン周辺の空間を描いた絵画とデッサンが、暖色と軽やかな線で表現されている。
本展では、鉛筆、油彩、水彩による印象的なデッサン作品が一堂に展示され、栗並木、林、池とその彫刻、そしてサント・ヴィクトワールの遠景が描かれている。スイスやアメリカから集められた非常に美しい水彩画を前に若き日の彼の画力に圧倒される。
無論、代表作の水浴する人物を描いた作品も展示されており、セザンヌの高校時代の同級生、ゾラがエクス・アン・プロヴァンスで過ごした長い自然への旅を想起させる。油彩や水彩画で描かれた水浴の作品は神話や聖書の場面を間接的に表現したものも幾つかある。
セザンヌが独自に開発した横顔、正面、横臥(おうが)、立位など、空間に裸体を配置した作品もあり、セザンヌは、それらを同じ対角線または垂直線に沿ってコンパクトにまとめ、構図を構成している。セザンヌはヴィクトール山と周辺の自然から、さまざまな果物から水差しまで何気ない生物を描いて芸術の域を極めるために大真面目に追求した画家だった。
安倍雅延






