
能や狂言の面を趣味で作っている「秋田面づくり同好会」(船木あつ子会長代理)の「能・狂言面展」が先日、秋田市のアトリオンで開かれた。会場には女面(おんなめん)や髭景清(ひげかげきよ)、三光尉(さんこうじょう)など喜怒哀楽を表現した多彩な85面が出展された。銅板の象嵌(ぞうがん)を施したものもあり面の魅力の一端に触れることができた。
会は平成9(1997)年に結成され、一時は十数人の会員がいたが(女性3割、男性7割)、近年は高齢化や病気で亡くなる人が相次いでいる。今回は追悼を兼ね、元会員を含め12人の作品を集大成する発表会となった。
会場中央には特別コーナーが設けられ、3月に亡くなった前会長・平川秀悦さんの子牛尉(こうしじょう)、孫次郎、猿田彦(神楽用の天狗(てんぐ)面)、仏面の金剛力士など13面に加え他の物故者の作品、そして残り木を活用した根付が展示された。
同会では入会するとまず、最も若い清楚(せいそ)な乙女の節木増(ふしきぞう)など3面を先輩方に教えてもらい作製。その後は好きな面(おもて)を打っていく。
作り方は、ヒノキやヒバの板(縦20、横14、厚さ7㌢、重さ約1㌔㌘)を削り込み最終的には100㌘ほどにする。「重いと面をつける人が大変」だからで、さまざまなノミを使い紙やすりをかけ薄くする。
削った面に、貝殻をつぶした粉をニカワと水で溶かした乳液を塗り重ね、最後は墨や顔料、絵具で彩色を施す。削りの段階では木の削りカスの粉などで補修可能だが、彩色は神経を使う。説明してくれた会員は筆を大小30本ほど持っているが「目を描くのに神経を使う。間違えばすべて洗い流して一から彩色し直すこともあった」と語る。完成は平均3カ月ほどかかる。
能面は「本面」をそっくりそのまま写し取ることが基本。「各自、好きな面を打ちます。私は朗らかな面が好きですね。無心になり三食忘れて朝になった時もありました。会員の交流も楽しみです」。
別のOB会員は「目は左右で違う。上向きは怒り、下向きは笑いの表情になる」という。「のめり込みます。次第に面相が見えてくる」。
各自、自宅で制作するが、会では毎月2回、市役所内の中央市民センターで交流を兼ねて集まる。
(伊藤志郎)