
ダヴィッド・ナーマドの展覧会 ジヴェルニー美術館
フランス近現代美術史格好のコレクション
フランスを彩る近現代美術の巨匠たちの絵画、デッサン、彫刻を集める億万長者のコレクター、ダヴィッド・ナーマド氏の収集した作品群は、フランスの近現代美術史の足取りを旅するのに格好のコレクションだ。
モネが愛した自邸のあったパリ西方のジヴェルニーにあるジヴェルニー美術館では「ナーマド・コレクション:モネからピカソまで」展(6月29日まで)が開催中だ。
「過去50年間で最も偉大な美術商だ」と言われるダヴィッド・ナーマド氏は、レバノンの億万長者で元美術商、モナコに住むシリア系ユダヤ人の芸術家の子孫だ。
第2次世界大戦後の1960年代、10代のナーマド氏はすでに美術品の取引を始めた。ユダヤ人美術商として知られ、巨匠の名作を多く所有している。
ナーマド氏の存在は株式市場における大手証券会社に例えられると言われ、コレクターとして高い評価と影響力を持っている。
現在は亡き兄弟のジョセフとエズラ・ナーマドとともに、5000~7000点にのぼる膨大なコレクションを築き上げた。
その中に今回、展示されているピカソをはじめ、モネ、ルノワール、ピサロ、シスレー、マティスなど19世紀と20世紀を飾る巨匠たちの作品を所有するナーマドの同展は、印象派に影響を与えた19世紀のドラクロワとコロー作品から始まる。
「モレ橋と水車小屋 ― 冬の情景」(1890年作)は、日本の浮世絵風の考え抜かれたシスレーの構図でモレ・シュル・ロワンを描いている。数点のモネ作品の中にはモネの自宅、ジヴェルニーの池の睡蓮(スイレン)を描いた初期作品1点「睡蓮と背の高い草の反射」(1897年作)も含まれる。
弟子のルオーとマティスの育ての親、ギュスターヴ・モローや見事な色彩で知られるオディロン・ルドンの花の絵は、古典から色使いの自由を解放したモローの20世紀美術の幕開けを強く印象付ける作品が展示されている。
同展覧会は、ナーマド コレクションに所蔵されているモディリアーニ、マティス、ピカソという現代美術の主要人物3人の作品で終わる。
ピカソ作品「花を持った小さなピエロ(道化師としての画家の息子パウロの肖像)」(1923年作)には、ルノワールの子供の肖像画やルドンのパレットの影響が見て取れる。
ナーマド氏はピカソの作品を約300点所有しており、個人コレクションとしては最大規模となっている。
19世紀後半から20世紀前半を飾った巨匠作品、今も高額取引される作品群をモネの聖地ジヴェルニーで鑑賞できることは大いなる喜びと言える。
同時に21世紀の美術の混迷を痛感することにもなりそうだ。
(安部雅延)





