トップ文化「わらの文化 交流の集い」秋田県美郷町

「わらの文化 交流の集い」秋田県美郷町

保存活動に取り組む

稲わら4本で「編み南蛮」作る

4本の稲わらで唐辛子を結ぶ「編み南蛮」を完成させた体験講座=美郷町住民活動センター

昭和30年代ごろまで、秋田県内で広く見られた「わらの文化」の保存活動に取り組んでいる自治体がある。秋田県南部の美郷町(みさとちょう)だ。3月1日、第7回「わらの文化交流の集い」(同町教育委員会主催)が美郷町住民活動センターで開かれ、道祖神とわら文化の二つの講演に続き、約30人が参加し4本のわらだけで「編み南蛮」と「しおり」を作る体験講座が開かれた。

「わらに触れることによって穏やかな気持ちになる」と松田知己(まつたともみ)町長が挨拶(あいさつ)。『村を守る不思議な神様』の郷土史研究家・小松和彦氏が県内約160カ所に現存する人形道祖神(木とわらで作る)を写真と地図で紹介。大館市の北部と横手盆地に数多く祀(まつ)られていると言い、特に毎年作り変えられることでわら作りの技術が伝承されていると強調した。

一方、40年以上にわたって、わらと日本文化を研究している宮崎清・千葉大学名誉教授は、注連(しめ)飾りや藁沓(わらぐつ)、猫編み技術などで「朝鮮半島と日本は共通点が大変多い」とし、稲が日本に伝わってきたルートとして、華南→琉球列島、江南→朝鮮半島と九州、そして華北→朝鮮半島の三つの説が有力視されていると言う。

「注連飾りなどを通し田んぼや畑で、神様が見ている前で仕事をするから俺たちは頑張るんだと考えていた」「縄文時代の蔓(つる)や草を編んだ技術がわら工作にも活きている。卵を包む『卵つと』の技術はアメリカで絶賛された」と解説した。

午後からは参加者約30人が、わずか4本の稲わらで作る「編み南蛮」と「しおり」に挑戦。山形県真室川町の髙橋伸一氏(工房ストロー主宰)が講師となり「美郷わらの会」(高橋久一会長、会員約40人)が補助をし、赤唐辛子を幾つも編み込んでいった。60代の女性は「唐辛子を抜いても形が崩れないのがすごい。作れたという達成感がある」と満足げだった。

同町の歴史民俗資料館は旧千畑(せんはた)町を中心に収集されたケラ、ワラジ、背中当て、エヅメ、恵比寿俵や製作道具など約600点を収蔵。わらの会では同館2階で第2、3、4の金曜日午後に誰でも参加できる定例会を開くほか、小学生や一般向けのワークショップ、県立近代美術館での展示に協力し、わら文化の普及に努めている。

(伊藤志郎)

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