トップ文化【フランス美術事情】パリの元牢獄で 「啓示!ベナンの現代美術」

【フランス美術事情】パリの元牢獄で 「啓示!ベナンの現代美術」

「エモ・デ・メデイロスのヴォドゥノートシリーズ」c©Brice Dansou

最貧国の美術遺産が来館者魅了

略奪品をアフリカ諸国に返還途上

古代ダンクソメ(現在の西アフリカ・ベナン)に26点の王室の宝物を返還したフランスの首都、パリの元牢獄(現コンシェルジュリー)で、ベナンの古代芸術から新進気鋭の作家の作品までを展示する「啓示!ベナンの現代美術」(2025年1月5日まで)が開催中だ。

コンシェルジュリーはフランス革命の起きた1789年から、フランス王妃マリー・アントワネットや政治犯らが投獄されたパリ中心部にある牢獄で、現在は司法宮になっている建物だ。今年7月のパリ五輪の開会式で、女優に扮(ふん)したマリー・アントワネットが窓辺から血みどろの女の首をぶら下げてギター演奏したことで、グロテスクと批判を浴びたことが記憶に新しい。

文化遺産になっているコンシェルジュリーは観光名所にもなっており、今回のように展覧会に使われたりしている。同展は2022年2月にベナンの最大都市、コトヌーで開催された展覧会の規模を拡大してパリで実施され、その芸術的インパクトが多くの来館者を魅了した。

世界最貧国として知られるベナンは、ブードゥー教発祥の地でもあり、現在の統治政府は、自国の創造力と遺産を経済的、社会的成功のショーケースの一つにしたいと望んでいる。2021年に返還されたベナンの美術遺産26点は、129年前、仏軍将校によって略奪され、最終的にはパリの原始美術を扱うケ・ブランリ=ジャック・シラク美術館で展示されていた。

ローマ古代遺跡も所有するルーヴル美術館もフランスの旧植民地で略奪した遺産のアフリカ諸国への返還の途上にある。違法に持ち出され、ヨーロッパ内の美術館に展示される作品は多いが、アフリカの多くの国々が返還を求めている。略奪品はアフリカの内乱や内戦から作品を守った事実はあるものの、返還に応じる動きは加速している。

今回、ベナンに返還され、展覧会に展示されているダホメ王国(17世紀~19世紀)の宝物26点に加え、現代のベナン作家の作品は、予想以上のインパクトをフランスの来館者に与えている。ドミニク・グノンヌー・クアスの金属トーテムは形状美とベナン文化を見事に表現している。

展示作品の中には、世界中の人々が直面するデジタルの波を反映するエモ・デ・メデイロスの「ヴォドゥノート」という作品も注目されている。未来が予見されるヘルメットの中に過去と未来の動画を映し出すスマホが組み込まれたもので、グローバリゼーションの時代における異人種間の混血と異文化の問題を見事に取り上げている。

ベナンの芸術家にしてみれば、ブードゥー教の忌まわしい過去から、奴隷制時代の19世紀、20世紀の暗い過去は、作家の思考に深さを与えている一方、欧米やアジアの作家にない、突き抜けたユニークさが新鮮さをもたらしている。

アフリカ独特の色彩と形状によって表現されたアフリカ美術は欧米やアジアの現代美術にはない力を感じさせている。

(安部雅延)

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