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2016年に日本で公開されたブラジル映画…


 2016年に日本で公開されたブラジル映画「ストリートオーケストラ」は、スラム街に住む学生たちが交響楽団を作り上げていく物語。暴力、麻薬、貧困などを抱えた社会だが、音楽を通して若者が未来に夢を抱いていく。

 この映画に特別出演したのは、サンパウロ交響楽団とその音楽監督マリン・オールソップさん。楽団は世界中のツアーで予定が詰まっていて、撮影は本編の撮影が終わってから6カ月後。

 しかも2日間だけ。だが、よく訓練されていた。セルジオ・マシャード監督は「映画の中で一番演技のうまかったのは指揮者のオールソップさん」と述懐。カメラが回っていても、物おじせず、自然に。

 オールソップさんは世界でも有数の女性指揮者。その指揮ぶりは美しく、格好良い。一流の女性指揮者は今でも多くなく、ハンディがあるらしい。女性指揮者の道を初めて開いたのはオランダ生まれのアントニア・ブリコ(1902~89)。

 その生涯を描いた映画「レディ・マエストロ」が9月に公開される。彼女は名指揮者カール・ムックの指導を受けて30年にベルリン・フィルで指揮デビュー。養子に出されたことから始まって、生涯がバッシングとアクシデントの連続だった。

 その克服の物語である。楽団員は女性指揮者には従おうとしない。ムックがアントニアに指導する。「オーケストラは民主主義じゃない。専制君主になれ!」と。米国社会で自らの道を開拓するマエストロぶりが見事だ。