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句の季語に「夏風邪」がある。「さむるたび…


 俳句の季語に「夏風邪」がある。「さむるたび潮騒を聞く夏の風邪」(山口誓子)、「夏風邪や河口重たき照返し」(岡本眸)、「夏風邪に臥せば亡児のゆめまくら」(飯田蛇笏)。生活感が滲(にじ)み出た句が多いように思う。

 夏風邪というのは、ちょっと乙な味わいがあるのだろうか。しかし、罹(かか)るとこれほど嫌なものもない。夏風邪の嫌なところは、症状は比較的軽いが、長引くことだ。

 長引くのは、夏風邪のウイルスは冬にひく風邪と種類が違うことがあるらしい。しかしどんな風邪も免疫細胞が活性化して、ウイルスを退治すれば治るのだから、基本は同じだろう。

 ただ夏の場合、暑さのためついつい薄着をし、クーラーなどで体を冷やして体温を下げ免疫活動を弱める。また、睡眠がよくとれない場合が多い。あくまで気流子の素人了見の見立てだが、それほど間違ってはいないだろう。

 今年の夏風邪の流行は、梅雨が長く、その間例年になく気温が低かったことが大きいようだ。風邪に罹らなくても体調を崩したという人は多い。

 『池波正太郎の銀座日記(全)』を読んでいると、昭和63年頃から健啖家だった池波氏の食欲ががくんと落ちていったことが書かれている。その年の「夏から秋にかけての長雨と冷え込みで、私の体調はいっぺんにくずれてしまった」という。それ以来、池波氏の食欲はなかなか戻らなかった。まだ続く暑い夏、読者諸賢も体調管理に気を付け、元気に乗り越えていただきたい。