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長寿を祝う節目の年齢の一つに70歳の古希が…


 長寿を祝う節目の年齢の一つに70歳の古希がある。中国・唐の詩人、杜甫の詩<人生七十年古来稀なり>から来ているが、すでに古希は稀とは言えなくなっている。

 平成29年の日本人の平均寿命は男性81・09歳、女性87・26歳。よく生き、生かされてきたことに感謝しつつも、古希になっても人並みに年輪を重ねるまでには、まだ10年余り足りない。

 古希の次には喜寿77歳、傘寿80歳、米寿88歳、卒寿90歳と続くが、このあたりの人もそう珍しくはない。一昨年、作家の佐藤愛子さんの『九十歳。何がめでたい』(小学館)というエッセーが話題を呼んだが、私たちはそういう超高齢化時代を生きている。

 どういう自覚で生きるのか。気流子は空手の達人・大山倍達師と生前、親交を結ぶ中で心に残った言葉がある。稽古で弟子の正拳突きを見切ったつもりでも、体がかわせなかった。打撲痕を冷やしながら<「名馬も老いては駄馬となり」だよ>が口癖だった。率直な老いへの弁(わきま)えに感心したものだ。

 幕末期に西郷隆盛との交渉の結果、江戸城無血開城を成した勝海舟(明治32=1899年に77歳で没)の辞世の句は「虎となり鼠となりて老いにけり」であるが、10年ほどの歴史の表舞台から去ったのが46歳。

 それから30年ほどの「鼠時代」に、維新で職を失った元幕臣の救済事業にも尽力した。名馬から駄馬に、虎から鼠に、老いの弁えと生き方を探る今、感慨深い。26日は倍達師の命日である。