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ブータンのパロ盆地は山々に囲まれた風光の…


 ブータンのパロ盆地は山々に囲まれた風光の美しい集落。盆地の真ん中をパロ川が流れている。川といっても深くはなく、流れも緩やかで、川の北側にはパロ・ゾンと呼ばれる行政府と僧院がある。

 集落とゾンを結んでいるのが木造の橋だ。橋は屋根で覆われ、両側には漆喰(しっくい)の塗られた石造の小屋がある。素朴で情緒豊かだ。僧院への入り口であり、俗世界から聖なる地へ至る架け橋でもある。

 ゾンは白い石壁と小豆色の木造屋根が鮮やかで、橋が美しく感じられるのは、ゾンと同じ建築様式で造られているためだ。この風景に魅了されたのが、先日亡くなったイタリアの映画監督ベルナルド・ベルトルッチさん。

 ここで彼は英仏合作の『リトル・ブッダ』(1993年)を製作した。亡くなったチベット仏教の高僧の生まれ変わりを見つけ出してくる物語で、候補者の一人が米国のシアトルに住む白人の少年だった。

 探すために僧侶が旅立って行くのもこの橋で、見つけて連れて帰ってくるのもこの橋。並行して仏陀の半生が描かれていくが、ゾンで修道生活を送る少年たちや、僧侶の読経、庶民の民謡なども収録されている。

 この作品を見てブータンに興味を持ち、魅せられるようになった人は多い。かつてこの国を旅して観光客の中に欧米人が多いのに驚いたが、この映画の影響もあったに違いない。とりわけ輪廻(りんね)転生思想が生きていて、キリスト教文明圏の人々には興味津々。同監督の珠玉の作品だ。