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日本列島各地の干拓事業の歴史は古く、…


 日本列島各地の干拓事業の歴史は古く、東京湾や三河湾などの干拓も江戸時代から行われた。明治以降も個々の産業の振興を軸にした枠組みの中で実施されてきた。

 有明海内の諫早湾での干拓も古くから手掛けられてきたが、今問題になっているのは1989年に着工した農林水産省による国営干拓事業だ。諫早湾奥部を全長約7キロの潮受け堤防で閉め切って942ヘクタールの干拓地を造成し、2008年に営農が始まった。

 ところが、水質問題が発生し漁業活動に影響。10年の福岡高裁判決は開門して因果関係を調査するよう国に命じ、当時の菅直人首相が上告を見送ったため判決が確定した。

 一方、長崎地裁は今年11月、営農者らの申し立てを認め開門差し止めを命じる仮処分を決定。「相反する法的義務の板挟み」(林芳正農林水産相)という悩ましい状況である。

 干拓事業が農業や工業、街づくりの進展に貢献したのは歴史的な事実。諫早湾問題の解決には利害者間で対話を深め、歩み寄るしかないだろう。求めたいのは、むしろこのトラブルを奇貨として、今後の国土開発について展望を明示することだ。

 これまで農業、林業、漁業それぞれの生産拡大の方策はあったが、第1次産業全体の調和的な発展については、農水省ほか行政機関でほとんど研究されていないのが実情だ。これらの産業の協力関係を軸にした地域発展を考える時代が来ている。