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「周囲は特殊メークの新しい基準を作ったと…


 「周囲は特殊メークの新しい基準を作ったと言ってくれた。日本でこの世界を目指す若い人たちにも夢を与えられたと思う」。今年の米アカデミー賞でメーキャップ&ヘアスタイリング賞を受けた辻一弘さんが都内記者会見で。

 この間、多くのメディアでメークの秘訣(ひけつ)を聞かれたが「しっかりと自分を持っていないといけない」と答えている。メーク中、細かな注文をそのつど聞いていては時間内にできない。

 そういう現実的要請とともに辻さんの「どう完璧にやっても、全くの生き写しにはならない」というメークに対する考え方がある。重要なのは「監督らの意図を理解しながら結果を出す」ということだ。

 和辻哲郎は著書『面とペルソナ』で「顔面ほど不思議なものはない」「(伎楽面などは)日本の彫刻家の眼が肉体の美しさよりもむしろ肉体における『人』に、従って『顔面の不思議』に集中していた」と、日本の伝統的な面作りの特徴を挙げている。

 “顔作り”ということで面の作成とメークは似ている。辻さんの「全くの生き写しにはならない」「しっかりと自分を持つ」というメークの追求の仕方は、この「顔面の不思議」に集中した伝統の面作りに相通じるものがある。

 受賞対象となった英映画「ウィンストン・チャーチル」を見ると、主演俳優がチャーチルの顔と似ていることもさることながら、チャーチルの時局に向かう内面が見事に反映するメークになっているのに驚かされる。