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「今まで考えていた火山観測の哲学のような…


 「今まで考えていた火山観測の哲学のようなものが覆された」。草津白根山の本白根山(群馬県草津町など、標高2171㍍)で1人が死亡、11人が重軽傷を負った噴火について、気象庁の火山噴火予知連絡会の拡大幹事会後、東京工業大の野上健治教授が記者会見で。

 噴火は地下水がマグマで熱せられ、水蒸気となり爆発的に噴出する「水蒸気噴火」の可能性が高いが、前兆はなかった。それは「今までの火山観測の歴史の振り出しに戻るくらいの話」(野上教授)という。

 2000年の有珠山噴火を予知し被害を最小限に食い止めた岡田弘・北海道大名誉教授は「予知は有珠山周辺で23年間、観測データを集め続けた成果だった」「粘り強くデータと経験を蓄積していくことが肝要」と強調した。

 また火山観測の近年のトピックでは、14年9月27日の御嶽山噴火があり、この時は直前まで火山性地震の増減が観測されていた。多くの犠牲者が出たのは、噴火には至らないという誤判断が招いた結果だった。

 こうした火山観測の歴史と予知研究の実績を積み上げてきていただけに、これまで草津町の観測所を拠点に研究してきた科学者の一人、野上教授の驚きは理解できる。

 ただし火山噴火だけでなく、地震の予知研究でも、予知ができず同様の挫折を繰り返している。自然の変化(へんげ)自在の動きを読み取り、対応の仕方を知らせる科学者たちの横断的な研究や、そのための組織の編成が待たれる。