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「クレオパトラの鼻が曲っていたとすれば…


 「クレオパトラの鼻が曲っていたとすれば、世界の歴史はその為に一変していたかも知れないとは名高いパスカルの警句である。しかし恋人と云うものは滅多に実相を見るものではない。いや、我々の自己欺瞞(ぎまん)は一たび恋愛に陥ったが最後、最も完全に行われるのである」。

 芥川龍之介の「侏儒の言葉」の中の「鼻」の冒頭である。結びの部分も引用すると「つまり二千余年の歴史は眇(びょう)たる―クレオパトラの鼻の如何に依(よ)ったのではない。寧(むし)ろ地上に遍満した我々の愚昧(ぐまい)に依ったのである。哂(わら)うべき、――しかし荘厳な我々の愚昧に依ったのである」。

 簡単に言えば「痘痕(あばた)もえくぼ」ということなのだろうが、それを二千余年の歴史と絡ませ、「荘厳な愚昧」と言ったのが、他の作家と異なるところなのだろう。

 このように歴史的美女の代表とされるクレオパトラ。昨日付小紙フォト・ギャラリー欄で、エジプト・アレクサンドリアで初めて催されたクレオパトラ祭りの様子を、鈴木眞吉カイロ特派員が伝えている。

 クレオパトラに扮(ふん)した19歳の学生は、豪華な衣装と相まってクレオパトラはきっとこんな女性だったのだろうと思いたくなる美人。

 ハリウッド映画「クレオパトラ」の中で演じたエリザベス・テーラーに似ているような気もする。歴史上のクレオパトラはプトレマイオス王朝の女王だから、ギリシャ系の顔なのだが。それでも、古代エジプトへのロマンを掻(か)き立てる申し分ないクレオパトラだ。