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新田次郎の『アラスカ物語』は、エスキモーの…


 新田次郎の『アラスカ物語』は、エスキモーの一族を救出してアラスカのモーゼと仰がれた日本人、フランク安田を主人公にした伝記小説。この物語で作者が力を込めて描いたのは北極圏の大自然だ。

 冒頭に光彩を放つオーロラの描写が続く。それを「恐ろしい光景」と書いたのは、主人公が氷に閉じ込められた沿岸警備船から救援を求める命懸けの旅の気持ちを表現しようとしたかららしい。

 作者の「アラスカ取材紀行」によると、取材したのは1973年夏。オーロラは実物を見たのではなく、現地の研究者が集めた映像のカラー映画によるものだった。ノートにメモを取り、図も描いた。

 今では旅行会社がオーロラを観(み)るさまざまなツアー企画を組んでいるので、誰もが観ることができる時代になった。季節に関係なく発生するが、夏は白夜などで明るく観察には不向き。

 そこで秋から春がシーズンとなる。北緯65度から70度の所でよく見え、「オーロラベルト」と呼ばれている。ところが、1770年9月17日にはそれが日本各地で目撃されたという。京都で記録されたのが「星解」の絵図。

 史上最大級の磁気嵐によるもので、国立極地研究所などのチームが解析したところ、絵図は計算で再現した見え方と一致したそうだ。「星解」には規模や方角の記述もあったが、恐ろしく思ったかどうかは分からない。その光彩は当時の人々の思いをも日常を超えた地球の外界へと誘ったに違いない。