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寿司ネタとして人気の高いマグロを江戸前の…


 寿司ネタとして人気の高いマグロを江戸前の代表のように思っている人が多い。しかし江戸湾でマグロは捕れず、房総や三浦半島で捕れたものを、悪くならないように醤油に漬けて送った、いわゆる漬けが中心だった。

 江戸っ子は淡白な味が好きだったため、高級食材とは見なされていなかった。今のようにトロが好まれるようになった背景には、冷蔵・運搬技術が発達したこと、そして日本人が肉をよく食べるようになって嗜好が変化したことがある。

 韓国・釜山で開かれていた太平洋クロマグロの漁獲規制を話し合う国際会議で、ほぼ日本の提案に沿った合意が得られた。想定を上回る資源回復が確認されれば漁獲枠を拡大できるというものだが、資源回復の見通しが立ったわけではない。

 元水産官僚で東京財団上席研究員の小松正之氏によると、太平洋クロマグロの資源状態は初期の2・6%にまで減っており、これを回復するには、3~5年の禁漁が最も有効だ(8月31日付小紙Viewpoint欄)。太平洋クロマグロがなくても、ミナミマグロ、大西洋マグロもある。

 この案を日本橋の寿司屋の大将にぶつけてみたところ、意外にも反対はしなかった。「この季節はほとんど食べられないくらいがいいのでは」とも言う。

 アジやサンマなど季節の魚を楽しむ方が、食文化は豊かになるとの考えである。確かにその日、一番うまいと感心したのは、夏が旬の東京湾で捕れたアジだった。