世界日報 Web版

夏の休暇に、近畿以西の最高峰・石鎚山…


 夏の休暇に、近畿以西の最高峰・石鎚山(標高1982メートル)の麓にある愛媛県西条市を訪ねた。石鎚山系に端を発した加茂川が流れ、水都と呼ばれる町だ。

 その加茂川沿いに鎮座する楢本神社には、大東亜戦争末期、神風特攻第1号敷島隊隊長として23歳で散華した関行男海軍中佐の慰霊碑が立っている。西条市は彼の生まれ故郷だ。昭和50年3月、元航空幕僚長・源田実参院議員(当時)によって除幕された。

 慰霊碑のそばに神風特攻記念館があるが、あいにく休館中だった。訪ねた日は気温が30度を超え、アブラゼミの声がうるさく耳をついたが、加茂川の土手から石鎚山を望み、海軍兵学校出の秀才、関中佐の幼少時をしのんできた。

 関中佐が亡くなった後、母サカエさんは「軍神の母」として尊敬された。「敷島隊五軍神の志るべ」(神風特攻敷島隊五軍神奉賛会編)によると、当時「続々と訪ねる多勢の知名の方々に対して」サカエさんは倦まず迎えた。

 ところが一転、終戦を迎え「敗戦の傷は意外に大きく、人情は自然と荒び、祖国を救うために散った軍神の母を昨日まで讃えた声は消えて無く、住むに家ない関の小母さん(サカエさん)も途方に暮れる実状でありました」と記されている。

 ごく僅(わず)かな時間のうちにも人々の心の移ろいやすく、時代の空気に抗し難い一面が表れている。戦後72年。少なくなった戦争世代の戦中、戦後の体験談を語り継ぐ作業が急がれる。