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「『愛してる』と言って、そのまま旅立ち…


 「『愛してる』と言って、そのまま旅立ちました」。歌舞伎俳優の市川海老蔵さん(39)の妻でキャスターの小林麻央さん(34)が息を引き取る瞬間の様子を、海老蔵さんが記者会見で明かした。涙で目をぐしょぐしょにしながら。

 乳がんにかかり、闘病生活をブログで発信して英BBC放送の「女性100人」にも選ばれた麻央さん。最後の瞬間に「愛」という最も大切なメッセージを夫に残して旅立っていった。見事というしかない。

 どんな時も明るく、前向きな姿勢が多くの人々の共感を呼んだ。それは簡単なことではないが、麻央さんには天性があり、努力もしたに違いない。海老蔵さんは、麻央さんから「愛」を教わったという。「どこまでも自分より相手のことを思う」人だったとも。

 キャスターから梨園の妻となって、やんちゃなところもあった海老蔵さんを支えてきた。しかも嫁いだ家は、江戸歌舞伎を代表する市川宗家である。堀越家は普通の一家庭では済まない。

 2人の子を産み育て、長男の勸玄君は一昨年初舞台を踏んだ。その時は、病院から駆け付けその晴れ姿を見ることができた。「私が役者として成長していく過程を見守ってほしかった」と海老蔵さんは言うが、もちろん息子の成長も同じだろう。

 歌舞伎界は、親戚でなくとも先輩を「小父さん」「兄さん」と呼ぶのが仕来り。そんな家族的な結び付きが、今後も市川宗家の支えとなることを祈りたい。