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難病患者の福音と言われたiPS細胞(人工…


 難病患者の福音と言われたiPS細胞(人工多能性幹細胞)。京都大学の山中伸弥教授がiPS細胞を作製し、その論文を発表してから10年が経(た)つ。

 今年3月には、備蓄された他人のiPS細胞を使った再生医療で世界第1号となる網膜細胞の移植手術が、理化学研究所(理研)と神戸市立医療センター中央市民病院などのチームによって行われた。

 患者本人からiPS細胞を作製する、いわばオーダーメードの治療では、移植までに約10カ月かかり、費用は約1億円に上る。しかし備蓄されたiPS細胞を使うことで、手術までの期間は約1カ月、費用も数百万~2000万円程度に減らせるようになった。

 より多くの患者がiPS細胞による再生医療の恩恵に浴するメドが立ったわけで、実用化への新たな段階を迎えている。

 網膜だけでなく、この間、筋肉、毛髪、角膜、脊髄、軟骨、皮膚、心筋、肝臓の細胞、そして脳、膵臓、肺についてはその一部を作るまでになった。網膜や角膜の病気、パーキンソン病、脊髄損傷、心不全などへの応用が始まっている。

 さらに耳新しいニュースが入ってきた。全身の筋肉が動かなくなる筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の神経細胞をiPS細胞で再現し、細胞死を抑える薬がマウスの実験で発見されたという。実験を手掛けた京都大iPS細胞研究所の井上治久教授は「治療薬の開発研究に貢献が期待できる」と自信を見せている。