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福島県郡山市の北東の外れに西田町がある。…


 福島県郡山市の北東の外れに西田町がある。田村郡三春町と境を接した草深い田舎で、江戸時代には三春藩に属していた。郡山方面から国道288号を東に進み、さらに田舎道に入った奥に雪村庵がある。

 アズキ色をしたトタン屋根の小さな庵で、前庭には池や、シダレザクラ、サルスベリの木があり、背後は竹林。戦国時代の画僧、雪村周継が70歳以降、80歳代後半で亡くなるまで晩年を過ごした土地だ。

 雪村は常陸国(現在の茨城県)で戦国武将の一族に生まれ、幼くして出家し、画僧の道を歩んだ。会津、小田原、鎌倉、三春など東国で活躍し、雪舟を慕っていたが京都に赴くことはなかった。

 特別展「雪村 奇想の誕生」が東京・上野の東京藝術大学大学美術館で開催中だ。副題にある「奇想」は企画者たちが知恵を出し合って決まった言葉らしいが、雪村の画風をストレートに表現している。

 その人物画や山水画は独創的で、劇的で、動植物画には細やかな感性が光っている。地元を別にすればあまり知られてこなかった画家だが、岡倉天心は「雪村は雪舟を正面とすればその裏面を描いた」と再評価した。

 今回、海外からの里帰り作品もあるが、米国では禅ブームの1950年代から70年代にかけて収集され、雪舟以上に知られるようになったらしい。豊かな四季に育まれた東北弁の画家だが、没後四百数十年もたって世界的に有名になろうとは考えてもいなかったに違いない。5月21日まで。