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その少年は何やらブツブツ呟き、頭の中で…


その少年は何やらブツブツ呟(つぶや)き、頭の中で文章がすっかり出来上がってから声に出してしゃべるのだった。ちゃんと育つのだろうか、と親は心配した。

 そのアインシュタイン少年は、長じて特殊相対性理論、一般相対性理論を主唱し、ノーベル賞も受賞した。「ニュートン以来最大の物理学者」と言われたが、その後専門家の間では「古い」と見なされるようになった。

 彼は物理学者としての成功以来、堂々たる名声のまま亡くなった(1955年、享年76)とされることが多いが、最近、文庫として刊行されたマンジット・クマール著『量子革命』(青木薫訳・新潮文庫)によると、アインシュタインは量子力学について強い疑問を持っていた。

 量子力学は、素粒子(例えば電子)の位置を正確に計測することはもともとできないとする。素粒子は気まぐれで、その場所にその素粒子が存在するのは偶然でしかない。

 しかし、アインシュタインは「神はサイコロを振らない」としてこれに反対した。「サイコロ」とは、偶然性、不確定性のことだ。「世界の基礎が偶然であるはずがない」というのが彼の「古さ」だ。

 量子力学の考え方は今では公式に認められている。科学技術の相当の部分で応用されてもいる。とはいえ、アインシュタインの見解も興味深く、彼の「古さ」が本当に古いかは分からない。いずれにせよ、物理学のあれこれが今後まだまだ解明されていくだろうことは間違いない。