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梅の花の盛りを過ぎないうちにと、東京・文京区…


 梅の花の盛りを過ぎないうちにと、東京・文京区の湯島天満宮(湯島天神)を訪ねた。地下鉄の湯島駅から2~3分、落ち着いた佇まいの通りを行けば、男坂、女坂の下に出る。表通りとは違って、既に新派の名作「婦系図」の世界である。

 石段に沿って、白梅が今が見頃と清楚(せいそ)な花を咲かせていた。石段を登り切ると境内だが、坂下の静けさから一転して縁日のような賑(にぎ)わいである。境内の梅園には紅白、さまざまな種類の梅が咲き誇り、カメラやスマホで写真を撮る人、緋毛氈が掛けられた床几(しょうぎ)に腰掛け眺める人。外国人観光客の姿もちらほら見える。

 一方、社殿の方に目をやると、梅に劣らぬ存在感を示しているのが、たくさんの絵馬である。湯島天神の御祭神は、学問の神様、菅原道真公。おびただしい数の合格祈願の絵馬が絵馬掛けに幾層も分厚く重なっている。

 観梅より、参拝に来た人も多い。来年の受験の合格祈願だろうか。境内には、泉鏡花の筆塚、新派碑など「婦系図」にゆかりのものも数々あるが、訪れる人のどれほどが、お蔦(つた)、主税(ちから)の物語を意識していることか。

 境内の梅を一通り見終わって、男坂の降り口に差し掛かると、前を幼稚園くらいの男の子が降りて行こうとしていた。後ろから若いお母さんが「鳥居の外に出たから、神様にご挨拶(あいさつ)して」と声を掛けた。男の子は境内の方へ向き直って、ぺこりとお辞儀をした。

 これだけきちんと参拝できるのだから、きっと合格できるだろう。