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83歳の御誕生日を昨日迎えられた天皇陛下。…


 83歳の御誕生日を昨日迎えられた天皇陛下。皇居の一般参賀には約3万8000人が訪れ、天皇誕生日としては即位後最多という。退位の御意向を示唆されたビデオメッセージ公表で、陛下と陛下の御健康を願う国民との絆がさらに強まったようだ。

 昭和6年、陸軍大演習のための九州行幸を終えられた昭和天皇の御召し艦「榛名」は日没後、鹿児島港を出港、一路横須賀に向かった。暫(しばら)く行くと右手の薩摩半島、左手の大隅半島の海岸沿いで、御召し艦の通過を知った住民たちが盛んに篝火(かがりび)を焚(た)いて、奉送の意を表している。

 ほとんどの随員はこれに気付かなかったが、後甲板にお出ましになっていた昭和天皇が気付かれ、闇の中で繰り返し挙手の礼を返された。

 随員の一人、宮内省事務官の木下道雄が榛名の園田實艦長に伝えたところ、感激した園田艦長が6基の探照灯を全て点灯し、両海岸に照射して住民の奉送の誠に応えた。

 君臣相和した美しいエピソードは、小堀桂一郎氏の近著『鈴木貫太郎』(ミネルヴァ書房)でも紹介されている。

 90歳になる英国のエリザベス女王の公務が一部縮小されることが発表された。亡くなるまで退位はしないとの意味もあるのだろうか。女王は21歳の誕生日、「生涯を国民に対する職務に捧げる」と宣言した。国やそのかたちは違っても、国民との結び付きに自己の全てを捧げる君主には自然と畏敬の念が湧いてくる。