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「皮をはいで、ピンク色の肉がむき出しに…


 「皮をはいで、ピンク色の肉がむき出しになったサーモンに、夢中になってかぶりつくクマの姿を見ていると、自分もクマになって食べてみたいと、いつも思う」。

 動物写真家の前川貴行さんが写真集『クマたちの世界』(青●社)〈●=くさかんむりに青〉の中で書いた言葉。暗い洞窟の入り口でサーモンをくわえたブラックベアーの顔をとらえた作品は代表作の一つ。「バリッ、バリッ」と骨の砕ける音が聞こえてきたという。

 前川さんにとってクマとは何か。「まさに自然を象徴するものです。とても美しく、素晴らしい魅力にあふれ、その圧倒的な存在感で魂を揺さぶり、人に畏怖と畏敬の念を抱かせる」とも語る。

 青森県、秋田県などでクマによる危害が急増している。ネマガリダケを採りに行った人が襲われる例が多い。前川さんは世界中のクマを被写体として撮影してきたが、幾度遭遇しても襲われなかった。

 連絡してみると「きょう、アラスカから帰ってきたところです」という。「クマの撮影をしに行ってきたのです。今回も3㍍の距離で若いクマと出会ったのですが、何も起こりませんでした」。

 日本でのクマ被害を話題にすると「ぼくだから大丈夫だという自信はありません」という。前川さんが自然の中にいるとき痛感するのは「病んでいくばかりの地球環境」。一人一人が「狂気の世界から脱却をはからなければならない」という思いを強くしている。