世界日報 Web版

「例えばキリスト教は、その初期においては…


 「例えばキリスト教は、その初期においては、ローマ帝国の中では公認されていなかった。したがって、キリスト教徒は、ローマ公認の宗教を信じない、あるいはそれに従わないという意味で、『無神論者』と言われた時期がある」。

 先日亡くなった宗教学者、田丸徳善(のりよし)さんが1985年11月、日本キリスト教学際学会で行った講演「シンボルとしての神」の一節。キリスト教徒には反論も可能だが、神概念のズレがあって議論はかみあわない。

 田丸さんは仏教の浄土宗を背景として、53年東大文学部卒業後、ドイツのボン大学と米国のハーバード大学に留学し、哲学と宗教学を学んで帰国。立教大学、東大、大正大学で教鞭をとり、日本宗教学会会長を務めた。

 宗教学の社会への大きな貢献は、諸宗教の対話の道を開き、相互理解と協力の場を生み出してきたことだ。田丸さんが同会長を務めていた96年、宗教界全体を揺さぶる政治的な出来事があった。

 宗教法人への規制強化を狙った稀代の悪法「宗教基本法案」の登場だ。田丸さんは「わが国のこれまでの宗教政策の歴史や宗教的な風土に対する無知にもとづいた、きわめて近視眼的な対応」と批判。

 その主張は田丸さんの監修による『宗教と政治の接点』(世界日報社)に盛り込まれたが、ここには国内外の言論人、宗教学者、宗教家が集い合わせることになった。同法案が廃案にされたことで日本は守られたのだ。