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【上昇気流】「草の花」という言葉がある


ワレモコウ

 「草の花」という言葉がある。野草の花は四季折々に咲くが、秋に一番多いために秋の季語となっている。草それぞれに名前があるが、知られていない名前を詠んでも親しみが湧かず、俳句では草の花というらしい。

 ワレモコウやガマの穂など、生け花でも野草を使うことがある。『生け雑草』(柏書房)の著者、小林南水子さんは、空き地や道端で見つけた雑草を採ってきて、水切りし、器に生けて、玄関や洗面所に飾ってきた。

 それらを写真に撮って、110枚を選び、文章を添えてできた本だ。風情があり、生活が自然とつながっている感じがして、楽しい。李朝白磁や須恵器の壺(つぼ)に生けられた花々は、実に美しい。

 新たな美の発見だ。随筆家で登山家でもあった串田孫一は、生活を取り巻く自然の中に面白いものを見つけて『博物誌』(全5巻、現代教養文庫)に収めた。動物も植物もあり、絵は辻まことが担当。

 串田が東京の小金井市緑町に住んでいた頃の話だが、裏の畑から草原を歩いていた時、カヤツリグサを見つけた。手に取って思い出したのは、幼稚園児だった時、先生がそれで蚊帳を作ることを教えてくれたこと。

 カヤツリグサには種類が多く、標本を作ろうとしたが、実行しないまま。コゴメガヤツリ、チャガヤツリ、タマガヤツリその他あり、形は千差万別で実に面白い。ソロモン王でさえ野の草花ほども着飾っていなかったという、聖書の中のイエスの言葉を思い出した。