世界日報 Web版

【上昇気流】「親ガチャ」という言葉がはやっているらしい


ガチャ

「親ガチャ」という言葉がはやっているらしい。初めは、親とおもちゃのガチャにどんな関わりがあるのか理解できなかったことを覚えている。

 流行語は、流行に敏感な若い世代で使われ、それがテレビや雑誌、マスメディアなどで取り上げられるまで、耳慣れない言葉でしかない。親ガチャもその一つ。

 ガチャから出てくる商品には当たり外れがある。親も自分が選べないという点では似ている。要するに、親が裕福であるかどうかで、その後の人生の勝ち負けが決まってしまうという意味らしい。

 この考えを押し進めると、すべて先天的な環境によって人の運命が左右されてしまうということになる。占いの流行とどこか通じるものがあるようだ。こうした考えが出てくるのも、ある意味では日本が平和だからかもしれない。生家が裕福であることが、かえって重荷と感じられた時代もあるからだ。

 例えば文学者の太宰治は、青森県で有数の大地主の子供として生まれたので、親ガチャという意味では大当たりだった。しかし太宰は、その出自からくる心理的な苦悩によって、左翼運動へ傾斜したり、自らの人生を否定的に捉えていたりした面がある。

 同じように豊かな銀行支配人の子供として生まれた文芸評論家の亀井勝一郎も、こうした負い目から左翼運動に一時走っている。後に転向して、仏教思想を軸に文明批評などに筆を振るった。1966年のきょう、亡くなっている。