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全国で数百あると言われる文学賞の中でも、…


 全国で数百あると言われる文学賞の中でも、芥川賞・直木賞の注目度は高い。特に芥川賞はそうだ。「文藝春秋」(3月号)では「芥川賞150回」の記念特集を組んでいる。が、そこは主催者だから、都合の悪いことは書かれていない。

 そこで、外部の視点から芥川賞について第1回(昭和10年)から今日までを詳細に記した川口則弘著『芥川賞物語』(バジリコ)を読んでみると、いろいろ分かってくる。

 一つは候補作の枚数について。芥川賞は、芥川龍之介が短編作家だったことにちなんで短編小説に与えられるが、その枚数が問題となることが多かった。

 戦後になって、300枚に迫る作品が増えてくる。作家である選考委員たちは「短編ではない」との理由で長い作品を落とす傾向があるが、半面内容がよければ短編を超えた長さの作品が受賞することも多くなった。

 もう一つは「新人」の基準だ。「芥川賞は新人賞」との理由で、ある程度活躍している作家には賞を与えなかった。が、やがてそれも緩んで、芥川賞は新人作家だけが受賞するものではなくなった。

 『芥川賞物語』は、作家である選考委員と主催者(出版社)との力関係について、強い立場が選考委員から主催者へと移行した事実を指摘する。「いつ、どんな形で」とはもちろん特定できないが、変化は確実に起こっている。それを主催者側がはっきり認めるわけにはいかない事情もよく分かる。