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人と人との間の距離感が変化しているのだ…


 人と人との間の距離感が変化しているのだろうか。例えばテレビの鑑定番組を見ていて、そんな感想を持つ。鑑定を依頼した収集家が所蔵の皿の美点について、とうとうと語る。専門用語も交えて自信たっぷりだ。

 目前には専門の鑑定者がいるのに「30年ぐらいだいぶ勉強してきたので、評価には自信がある」などとも言う。自信があるのであれば鑑定なぞ依頼する必要もないのに、余計なことを言う。

 鑑定が下って、本人評価額の数百万円に対して5000円の数字が示されると、ガックリと落ち込む。本気で本物と思っていたのが分かる。プロの前で素人が独自の見解を堂々と披瀝(ひれき)することの滑稽さの自覚が全く欠けているのが愚かしい。

 テレビという状況がそういう人間を生むのだろう。鑑定番組をテレビで(録画までして)見ているうちに、自分とプロ鑑定士との間の距離感が見えなくなってしまったのだろう。

 昔であれば「慣れ慣れしい」と言われる行為は恥ずかしいという感覚が働いた。こういう素人は少なかったのだが、その遠近法が崩れてしまった。テレビで日常的に有名人に接していると、昔からの知り合いのように思えてしまうのだろう。

 無論、テレビ局はその種の愚かしさも含めて番組を製作しているのだろうし、視聴者もそうした場面を期待して番組を見ている。テレビはともかく、この種の対人関係が人間生活の普通の場面でもゆっくり浸透しているようだ。少し気になる。