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きょうからお盆というのに、梅雨に逆戻りした…


 きょうからお盆というのに、梅雨に逆戻りしたような天気が続いている。季節感が狂いそうで心配だ。そのためというのではないが、歌舞伎座で三遊亭圓朝の怪談噺(かいだんばなし)を基にした「真景累ヶ淵(しんけいかさねがふち) 豊志賀の死」を観(み)て「夏はやっぱり怪談」と納得した。

 この季節に怪談をやるのは、ゾクッと寒気を覚えるからなどと言われてきた。中村七之助さんが、中年女豊志賀の赤裸々な執念を見事に演じ、ゾクリとさせる場面があった。しかし時々笑いを誘う演技もあり、怖くて楽しい舞台だった。

 原作者の圓朝は幕末から明治にかけて活躍し、「言文一致」運動にも影響を与えた。怪談噺では「真景累ヶ淵」のほか「怪談牡丹灯籠」などが有名だ。

 この2作、岩波文庫にも入っていて読んでみると、たくさんの人物が登場し、因縁が因縁を呼ぶ。その関係が入り組んでいて、寄席で初めて聞いた客はよく分からなかったのではないか。

 それでも、場面場面の描写や言葉の味わいを楽しんだのだろう。人間関係は入り組んでいるが、因果応報という点では筋が通っている。悪行は必ずその代償を払わされるというので首尾一貫しているところは、やはり幕末明治の人だ。

 怪談噺は江戸の泰平の世に盛んになった。最近は怪談もホラー映画も流行(はや)らない。テロや今まで体験したことのないパンデミック、しかもその発生源が中国のウイルス研究所かもしれないという怪談以上の怖い現実があるからだろうか。