世界日報 Web版

水墨画家の傅益瑤さんは1980年に中国から…


 水墨画家の傅益瑤(ふいやお)さんは1980年に中国から来日して以来、日本で絵画の研究と制作を続けてきた。当初から深い関心を持って全国各地で取材してきたのが、日本の祭礼文化である。

 中国にももちろん祭りはあるのだが、ほとんどが節句のお祝い。日本のように土地に固有の、自然と人間が一体となった不思議なエネルギーの渦巻く祭りは、中国にはなかった。

 その祭りの真っただ中に飛び込んで、エネルギーを体に取り込み、作品に仕上げていく。そんな体験を繰り返してきたが、大好きな祭りの一つが、青森県八戸市に伝えられる“えんぶり”だそうだ。

 その“えんぶり”がきょうまでの4日間、雪の中で行われている。800年の歴史を持つ国の重要無形民俗文化財だ。春を呼ぶとともに五穀豊穣(ほうじょう)を祈る祭りで、田を耕す動作が、踊りのもとになっているという。

 「この“えんぶり”を見て最初に感じたことは、踊りも衣装も、すべてが泥臭いことだった」(「日本祭礼文化の会会報」第10号)と傅さんは述べる。田舎っぽさに鈍重さが加わった祭りだという。

 ところが踊りが始まると、その無骨さに精神の強さ、心の堅実さが表れて、田舎人は英雄豪傑へと様変わりする。そんな様子を、傅さんは大作「八戸えんぶり祭」に描いた。寒々とした雪景色の中で、力強い踊りの行列が新羅神社へと続く。大昔の情景が時間を超えて今もここにある。