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宇宙空間を飛び交い、地球に飛来する…


 宇宙空間を飛び交い、地球に飛来する高エネルギーの放射線(宇宙線)が発見されたのは約100年前の1912年。以後、宇宙や物質の構造解明の武器として大変活躍している。宇宙線の大部分は陽子をはじめとする荷電粒子だが、それらは空中で分解して大半が電子の仲間であるミュー粒子(ミューオン)に変わる。

 大量に存在するこの素粒子を利用した観測技術の開発が進んでいる。高エネルギー加速器研究機構と東京大などのグループが、ミューオンを使って原子力発電所原子炉内部の核燃料の位置や大きさを特定する実験に成功した。

 ミューオンは物質を透過する能力が高いが、核燃料など密度が高い物体にぶつかると大きく減衰する性質がある。この特質を利用した原発管理のための新しい測定手法と言える。

 炉心溶融(メルトダウン)事故を起こした福島第1原発1~3号機では内部の放射線量が高く、溶け落ちた核燃料の位置が今もはっきりと分かっていない。しかし、この手法を調査に活用できる可能性もある。

 ミューオンは既に1960年代、ピラミッドの内部探査に利用された。近年では、浅間山や昭和新山などの火山観測で成果を上げ、この分野は日本が世界をリードしているという。

 原子力技術や原発を目の敵にしている人たちは、科学の進歩は人間の営々とした努力、協力の積み重ねによってなされることを知るべきだ。