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ピエール・ド・クーベルタン。ご存じ、近代…


 ピエール・ド・クーベルタン。ご存じ、近代五輪の父だ。新型コロナウイルス下での五輪開催を批判する向きは、この人のことを忘れている。彼ならばこう言うだろう。「リスクがあるから中止する? 冗談ではない。苦難を受けて立ち、それを克服するのが五輪精神だ」と。

 クーベルタンは1863年、フランスに生まれた。当時は1789年の大革命後のわずかの間に共和制、帝政、王制へと変転。1870年にはプロシアとの戦争の敗北で国民は意気消沈し、若者はすさんでいた。

 英国に渡ってパブリックスクール(私立中等校)を知り、彼は覚醒した。そこではスポーツを通じて統率力、自由と秩序のバランス感覚、公共の精神が育っていた。「ザ・ナイン」と呼ばれる名門校の一つ、ラグビー校の校長だったトーマス・アーノルドの教育思想の成果だった。

 同校に学んだ作家トマス・ヒューズは長編小説『トム・ブラウンの学校生活』で、アーノルド校長の下での寄宿舎の学び、友情、熱狂的なラグビー試合を描き、少年が紳士へと成長する姿を描いている。「ワーテルローの英国の勝利は、名門校のグラウンドによって作られた」とクーベルタンは悟った。

 敗戦に打ちひしがれている人々や希望を失っている若者に生きる力を。それが近代五輪を提唱した動機だ。

 コロナ敗戦を言うならば、なおさら五輪を成功させ、世界に歓喜の輪を広げよう。クーベルタンはそう切望するに違いない。

(サムネイルはWikipediaより)