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山開きが各地で開かれる季節になった。目的は…


 山開きが各地で開かれる季節になった。目的は安全登山の祈願だが、新型コロナウイルス対策のため、中止になったり、一般参加者を含めないで規模を縮小して行われたりする所もある。

 長野県の上高地で行われるウエストン祭は今月6日だったが、一般参加はないまま、日本山岳会と同信濃支部だけで実施された。併せて行われている、島々谷から入る登山も中止となった。

 6月の山は鮮やかな緑に覆われているが、梅雨の季節でもあり、雨に濡れることも多い。学生の頃八ヶ岳の稲子岳に岩登りに行ったことがあった。稲子湯から入り、みどり池を通過し、中山峠に行く途中にある岩山。

 標高差180㍍ほどの岩壁で、横に長く、幾つもルートがある。宿泊地は近くにある大学の山小屋で、テントと違って住み心地は良好。だが数日の間、毎日雨で、ついに一本のルートも登ることなく下山した。

 小屋に滞在している間、備え付けの世界山岳文学全集を取り出したり、山小屋日記を読んだりして過ごした。ページをめくっていくと、小屋の歴史の一端が楽しく感じられた。そして思わぬ記述に出くわした。

 随筆家の故串田孫一さんが、その大学の講師だった時、雪の日にやって来て、数日を一人過ごしたという記録だ。これは著書にも出てくる話なので、同じ滞在記を二つの文章で読ませてもらったわけだ。「寂しい山へ、黙って登ってください」という串田さんの人柄が感じられた。