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「朝の用なかれと思ひ新茶汲む」(水原秋櫻子)…


 「朝の用なかれと思ひ新茶汲む」(水原秋櫻子)。新茶が話題となる季節だ。「売り出される頃は茶舗の表に『新茶あり』と言う紙が貼り出されるが、誰もその文字を見て初夏を感じ、香ぐわしい茶の香りを思わずにはゐられない」。

 『新編歳時記』(秋櫻子編)で夏の部を担当した能村登四郎が解説した。加えて「甘いものと一緒に購め来て、鉄瓶に湯をたぎらせて淹れる新茶の味は、美味いというより新鮮な季節の味だという気がする」。

 ペットボトルの茶を飲む機会が多いが、普段使わない茶器を出して、茶の感触や色を楽しむのはいいものだ。これぞ日本の初夏。ところで、いろんなアジアの国々を旅して茶に出会ってきた。

 モンゴルでは温かい牛乳に茶を入れて飲んだ。ブータンではバターと塩を加えて味わった。スープのような感じだ。中国では山中の寺で振る舞われたが、ティーカップに葉と湯を入れ、蓋をして、葉が沈んだところで啜(すす)った。

 帰国して外国風にいろいろ試してみたが、日本の茶は製法も飲み方も自然環境に調和した固有のものと分かった。一杯の茶だが、ヨーロッパの近代史は「東洋の茶文化」に対する彼らの畏敬と憧憬(しょうけい)から始まる。

 経済史家・角山栄の『茶の世界史』(中公新書)によると、16世紀に来日したヨーロッパ人は「茶の湯」文化に出会い、魅せられた。そして、インドの綿布と並んで茶を求めることが近世資本主義を促進する契機となる。