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「目出度さもちう位也おらが春」(小林一茶)…


 「目出度さもちう位也おらが春」(小林一茶)。人通りが少なくなった道を歩いていると、公園のベンチで学生らしい数人が語り合っている姿を見掛けた。夜である。背後には満開となった八重桜が咲いていた。

 夜桜というと、妖(あや)しいまでの白さから神秘的なイメージを抱きやすい。桜の下には死体が埋まっていると書いたのは梶井基次郎だったが、桜の花の美しさが信じられないほどなので、そう思ったらしい。

 しかし同じ桜でも八重桜となると、花がピンク色なので神秘的な印象は受けない。華やかな花の屏風(びょうぶ)を背景に青春を謳歌(おうか)しているような感じを受けた。新型コロナウイルス禍によって、大学の新入生は授業がオンラインと対面の併用になって、キャンパスライフが変わって家で引きこもっての生活が多くなった。

 このニュースを聞いて、気流子は大学紛争が盛んだった時期に大学生活を送ったことを思い出した。ロックアウト状態の大学は正門が閉ざされて、授業は中止が多く、学期末の試験はほとんどがリポート提出となった。

 学生時代の友人は社会人となっても、同じ釜の飯を食った親しさがあり、長続きをすることが多い。その意味で、ロックアウトで同世代の友人が少ないことは残念だった。

 大学は本来、学問を学ぶ場なのだが、生涯の交流ができる友人をつくることも大事だ。そんな機会に恵まれない新入生たちが、早く正常な生活をできるようにエールを送りたい。