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新型コロナウイルスの感染拡大で、いろいろ…


 新型コロナウイルスの感染拡大で、いろいろ自粛せざるを得ないことがあるが、残念なのは人と会えないことだろう。仕事上会うのは一種の大義名分もあり、直接面談できなければ、電話やメールあるいはオンラインがある。しかし友人などは、たまに会いたいなと思っても、つい遠慮がちになる。

 何かの必要から会うのは、つまるところ実務的、功利的な人間関係である。会うこと自体が楽しいというのは、恋人同士に限らない。友人関係も本来そういうもので、電話やメールのやりとりには、やはり限界がある。

 詩人の荒川洋治さんがエッセイ「芥川龍之介の外出」で、電話も普及せずメールもなかった時代の文士たちの交友について書いている。芥川は予告なしに知人・友人を訪ねるので、待たずに会える確率は60%以下だったことを岩波書店版の全集の「年譜」をもとに書いている。

 当時の文士たちの行き来は、非効率で時間の無駄が多かった。しかし荒川さんは言う。「不在の可能性があるのに、出かけるのだ。だから会ったときにする話には、それなりの重みがあったはずだ」と。

 さらに「また当時は予告もなく会いに行くから、そこには世代のちがう人や、新しい友人がいたりして世界が開ける」。そして、不在であっても「今度来るときにはちがう話をしようなどと思う。思考が深まるのである」。

 今は、なかなか会えない友人に今度会った時に何を話すか、考える期間としよう。