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歴史小説が振るわない。歴史小説家も元気が…


 歴史小説が振るわない。歴史小説家も元気がない。スターもいない。歴史小説家が歴史について語る機会も減った。テレビでも歴史番組は放送されるが、出演するのは歴史学者ばかり。歴史小説家が登場するケースは少ない。

 10年ぐらい前、歴史小説家と話したことがある。「歴史小説は歓迎されない。時代小説ばかり要求される」と語っていた。

 歴史小説と時代小説は似ているが、だいぶ違う。歴史に題材を求めるのが歴史小説だが、時代小説の場合、作品の背景として過去が求められるだけだ。時代小説の背景となるのは江戸時代が多く、平安時代や鎌倉時代が対象となることはない。人にもよるが、時代小説が苦手な歴史小説家も多い。

 歴史的事実よりはロマンが求められる。タイムスリップを駆使して過去と現在を往来したり、人物同士が入れ替わったりする作品も多い。過去のその時代を生きた実在の歴史的人物が登場することはあるが、その人物自身への掘り下げはない。

 時代小説家に歴史の話を聞きたいとは誰も思わないだろう。苦境を一番自覚しているのは歴史小説家自身に決まっている。だが、歴史は史料や研究によって伝えられる一方、物語や伝説によっても伝えられる。『平家物語』に史実の不正確さはたくさんあるが、作品は不滅だ。

 その系譜を今に伝える歴史小説も不滅のはず。大河ドラマのような形は取りつつも、歴史小説の伝統は続いている。歴史小説の爆発を期待したい。