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ソ連が崩壊した後、しばらくたって米国を…


 ソ連が崩壊した後、しばらくたって米国を旅する機会があった。1997年の秋で、ボルティモアの街を歩いていて写真館で道を尋ねた。主人は答えてから「自分はホモだ」と告げた。

 写真家で文筆の仕事もしているという。私的なことをなぜ私に?と長く疑問に思っていたが、2015年に米最高裁判決で同性婚が合法化されたことで納得した。その主張は公民権運動の一環だった。

 20世紀最大のマルクス主義者と言われたイタリア人アントニオ・グラムシは、1921年にモスクワを訪問して滞在し、レーニン主義は失敗に終わると結論した。恐怖政治でしか体制を維持できないからだ。

 ソ連では市民社会が国家に内包されていたが、西欧では国家の統治機構とは別に、市民社会が私的機構として機能し、両者が適切な関係を保っている。国家が揺れても背後に要塞(ようさい)のような機構がある。

 支配するには被支配者の同意が必要だ。彼は文化そのものを変えることの重要性を理解した。それらの論考を集めた「獄中ノート」は81年に日本語版が出版され、90年代には仏、独、米と世界に普及。

 革命は昔と違って、基点は文化と個人。革命に暴力は要せず、政治制度に影響を及ぼすのは最後の一筆だ。今や米国の公立学校では生徒に聖書の教えを説くことは禁じられ、代わりに性の自由をはじめ、あらゆるライフスタイルが許容されている。建国理念の否定にまで至った新文化の根は、史的唯物論である。